永遠のジャンゴ

はや三日。

午前中は、有楽町ヒューマントラストシネマにて「永遠のジャンゴ(Django)」(エチエンヌ・コマール監督、2017年仏)。第67回ベルリン国際映画祭(2017年2月)でオープニング上映された作品で、ベルギー生まれのジャズ・ギタリストであるジャンゴ・ライナール(Django Reinhardt)の伝記的映画。

ジャンゴの「自由気ままさ」が、レダ・カテブ(Reda Kateb)の口先を尖らせた、いかにも不遜な演技によってうまく表されてゐる。戦争にも協力しないが、レジスタンスにも協力しないといふ立ち位置。「ロマは戦争をしない」のである。しかし、それがゆゑにジプシーたちの命は、ほとんど(少なくとも映画のうへでは)無抵抗に失はれてゆく。だからこそ、終幕のレクイエムが胸にひびく。

第二次世界大戦でフランスがナチス・ドイツに占領されてからも、ジャンゴは音楽活動を続け、1940年12月13日に録音された自作曲「Nuages(雲)」は、10万枚以上を売り上げる大ヒット曲となつたらしい。この作品は「占領下のフランスでは即席のフランス賛歌のやうに人々に愛された」とも言はれてゐる。戦時下のフランスで愛された理由は、もちろん演奏の技術だけではないのだらう。

www.youtube.com

ちなみに、レダ・カテブはアルジェリア系フランス人の俳優だが、大伯父はカデブ・ヤシン。ヒロイン役のセシル・ド・フランスは、大学の授業でよく『スパニッシュ・アパートメント』(2003年)を見せているだけに、大人になつたなあとしみじみ。42才。